(ぬ)乙女ゲーム感想保管庫。

乙女ゲームの感想日記。

明治活劇 ハイカラ流星組 ―成敗しませう、世直し稼業― 総合感想


オトメイト制作、高木D×清白かりんさんによる明治世直し恋愛AVG。



ハイカラ流星組 ―成敗しませう、世直し稼業―


大好きすぎる高木Dとめちゃくちゃ好きな清白かりんさんによるタッグ!最高でした!明治という時代背景を真剣に感じるシナリオで、やはり高木さんにはついていけるなと安心信頼の作品でした。




夜に紛れて帝都にはびこる闇を晴らす


帝都・新橋にある長屋で母と二人暮らしをしている主人公、けい。
父を事故で亡くし、病弱な母を支えるため働いて生計を立てていた。


拾六になったけいは、毎日通う神社で聞き慣れない言葉を耳にする。


「こんな時、流星組に頼めればな……」


いつもの日が続く。生活は貧しく母の薬代もままならない毎日――
時折すれ違う人力車、そこに乗る洋装の婦人たちの姿に思いを馳せた。


(洋装のご婦人と殿方が踊る夜会、か……いいなぁ……)


そんな或る日、仕事を終えて帰宅すると一着の洋服が届いていた。
差出人は不明。「これを着て今度の采緑館の夜会に参加されたし」とたったひと言だけ書かれた手紙が添えられていた。


迷った末にけいは送られた洋服を身に纏い、夜会に参加することに。踊った経験もなく、慣れない衣服と圧倒される建物に戸惑っていると――


「……お前の父の死の真相が知りたくないか?」


背後から謎の男にそう声を掛けられるが、振り返ると誰もいなかった。長屋に戻った主人公は父の死について母に問い詰めると驚くべき事実を知る。


父の死の真相、そして父の無念を晴らす為、
主人公は思いを共にする仲間達と立ち上がることに――!


公式サイトより)


プレイ時間


共通:13時間
個別:8~10時間


貧乏ながらも病弱な母と懸命に日々を過ごすけいちゃんが、差出人不明の招待状をきっかけに自身の父親の真実をしり、ハイカラ流星組を結成、少し活動するまでを描いたのが共通になります。すぐにハイカラ流星組を結成!というわけでなく、過ごしてきた日々の様子や、突然変化していく事がらに戸惑いや不安を抱く描写が多いので、共通は全体的にゆったり進む印象です。結成したあともすぐに活動!活躍!というわけではなく、手探りに初めてみる感じが強いので、早く物語が進んで欲しい人にはもどかしいかもしれません。しかし明治の時代背景、日常から非日常に戸惑う様子、けいちゃんという主人公の人柄を感じ取るのに必要な間だとも個人的には感じるので、共通はゆったりスタートでも気になりませんでした。


個別からは父親の死の真相に近づきつつ、それぞれのキャラが抱える過去に触れていきます。これが意外とシリアスで驚きましたね。会話劇であることと、ヒロインであるけいちゃんが庶民であるゆえに舞台が日常と離れないので、シリアスの重みも軽減していますが、描きようによっては凄くドロドロしていたと思います。けどあとで語りますが作品的にも何気ない庶民的な温かみ「人情」をテーマにしていたと感じる部分があるので、あまり日常とかけ離れ過ぎる重みにしなかったのは逆によかったのかなと感じますね。あえて”庶民感”を残して描いていると感じました。



選択肢/ED

選択肢

選択肢は基本3択(愛キャッチ有)
時折時間制限有りの選択肢があります。その際はQSは使用できません。


選択肢で印象的なのは共通の賢さんに対して「好きってなんですか?」的な選択肢があったことですね。高木ゲーでそんなド天然ヒロインみたいなかまととぶっていいんですか!?って意気揚々と選んだら冗談くらい分かって欲しいと叱られて笑いました。そりゃそうだ。高木ゲーのこういうとこめちゃくちゃ好きです。今作は皆ヒロインにクソデカ感情持ってるところから始まりますが、決して猫かわいがりするわけじゃないところ、安心しますね。大好きです。


ED

EDは歓喜ED、紲EDの全2種。


歓喜EDは攻略対象とも結ばれて、誰かから脅かされる事もなく母親と攻略対象と穏やかな日常を過ごせるEDです。今まで知らなかった事実を知り、日常が変化して危険と隣り合わせになり、あれよあれよと非日常に陥っていきますが、最終的に日常に戻れる話の流れがとても良かったです。日常って地続きのものですからね。物語としては悪を倒して完結!みたいな起承転結が必要でしょうけど、この作品はあくまで庶民に寄り添う組織の話だと思うので。大きな変化を残すオチではなく、日常に戻る終わり方はテーマに合ったシナリオだと感じます。


紲EDは逆に想いは通じ合いますが、非日常、危険と隣り合わせのまま生きる選択を選ぶEDですね。母親や長屋などのヒロインにとっての”日常”的存在とも離れる終わり方が多いです。父親の面影を追う終わり方とも感じましたね。個別や共通で父に近づきたいとけいちゃんが何度か言っていましたが、その結果が紲EDに近いと思います。通称ハイカラ流星組ED。まぁ全部がそうというわけじゃないんですけどね。徳さんの紲EDが性癖すぎてゲロ吐きました。最高です。


歓喜ED攻略後、後日談解放です。
エピローグでも語られてない部分も後日談で判明する事多いので、ED回収後に回収するのおすすめです。


システム/サウンド/グラフィック

システム

安心快適素晴らしいイチカラムさん。高木ゲーは相変わらず快適システムでいいですね。文句一切ないです。周回すれば共通シナリオが追加されるのも健在。これが楽しいんですよ。共通追加シナリオで分かる一面も多いので、ちゃんと隅々まで遊ぶの必須だと思います。
前作の天涯からMAP移動がなくなって寂しいんですが、聞き込みターンは段々事件の全貌が見えてくる感じとても楽しかったですね。情報もってるキャラがいない場所でもモブが結構細かい事喋ってるので全部聞いて回ってました。持ち物も一つ一つにちょっとしたコメントがあるの細かくていいですね。おまけボイスやラフ画も充実してますし、辞書がとにかくいろんな豆知識詰まってて好きです。読むの楽しいんですよね。


サウンド

いつもの高木ゲーらしいBGMで聞いてて安心する。聞くとあああ高木ゲーだ~~ってなっていいですね。限定版だとサントラつくので本当に重宝してます。サントラだけで買ったかいがあります。


グラフィック

明治時代の帝都、時代背景を感じれる背景グラとてもいいですよね。室内や夜だと少し立ち絵も暗くなったり、日が差せば明るくなるなど、立ち絵に明暗を付けて臨場感を出してる細かい演出が何気に大好きです。正月の飾りつけなど、季節物に合わせた背景があるのも個人的には好きでした。また清白かりんさんのイラストはどれも美しくって綺麗ですよね。他作品になりますが「Cendrillon palikA.」のイラストを担当されている時に、清白さんの色彩感覚、細かい小物の描写や構図に惚れ惚れして素敵な絵師だと感じましたが、今作もどれも綺麗なスチルばかりでときめきました。原色系の強めの色合いが多いのが、高木さんの描く個性的なキャラと合ってて好きです。



シナリオ

この作品は庶民的な温かみ、「情」がテーマになってるんだろうなって感じています。御維新後の明治。つまり殺しや戦などの争い事が収まり「武士の時代」が終わった後の時代です。そんな危険とは無縁の時代で育った”庶民代表”みたいなヒロインが、非日常に巻き込まれていく物語なんですよね。特別な能力も教育もされてない庶民のヒロインが、悪意に戸惑い不安に脅かされながら、それでも家族や周りの人間を思い遣る気持ちだけは忘れず、懸命に過ごす。物語の人物というより、自身と身近にに感じる等身大の人間像を描いたヒロインだなと思いましたね。そしてそんなヒロインに惹かれていく攻略対象達はいずれも皆一般的な温かい「情」とは無縁だった環境で育ってるんですよ。家庭や生い立ちに溝やら難やらがある人達ばかりです。そんな人達が母親と支え合いながら生きてきた非常に「情深い」けいちゃんに「情」を求めて惹かれていく。
この作品、攻略対象はそもそもゲーム開始時点で皆すでにヒロインであるけいちゃんになにかしらの大きな感情を持っているんですよ。でもそれは一言「恋心」って表すには複雑というか。「恋」とはまた違う思い入れを皆それぞれけいちゃんに持っていて、しかしその思い入れは「恋」ともまた似ていたりもしていて。物語が進んでいく中で皆この想いが「恋」なのか「そうじゃない」のか混同しながら、迷いながらもそれぞれの気持ちに整理をつけていきます。こうした恋愛過程って結構変わっていると感じましたね。普段の乙女ゲームであれば、恋をして、そこから愛情が生まれる印象ですが、この作品の場合は先に「愛情」がうまれて、恋になる印象でした。でもこの”恋愛”を過程として踏まない関係性ってなんだか”明治時代”らしいなと感じた部分でもあります。明治という時代。恋愛結婚なんてあまりなく、「家」のためにまず結婚という”手段”を取る時代です。”恋人関係”になり、付き合い、結ばれるという現代のような概念があまりない時代ですからね。「恋」の前に「情」が先に産まれるのもおかしくないのかなと。これはプレイしてて感じたことですが、どの攻略対象も「好き」ではなく最初に「愛してる」「愛しい」という言葉が出てきやすいんですよね。色恋を経て愛になるのではなく、「情」を求めて「愛」になるシナリオだったなぁと感じました。「恋」ではなく「愛」の物語だなと。
また「情」の話でいえば仕事面でもそうでしたね。今の時代の労働意識でいえばけいちゃんの労働態度って”仕事をサボっている”って印象に映りがちですが、モブも同じように休憩したいから外回りさせてほしいって言っていたことに対してけいちゃんが「ごめんなさい」と返していた様子から、なんとなく今の労働意識とこの時代では違うのを感じました。人と人の距離が近い分「お互いさま」な部分で成り立ってるというか。思えば労働時間というのは明治時代の工場などから始まった考え方ですよね。この作品がどれくらいの明治時代かはしっかり描写されてませんが、"労働時間”というものが生まれたばかりの時代であれば、現代の意識と差異があってもおかしくないのかもしれないなと。この時代の”常識”というのがわからないので、そうした意識を無視して個人的な意見をいえば、タクシーも電車もない街中、人力車を使うような距離を徒歩でぐるぐる歩き回ってると思うとそりゃ休憩もちょいちょい取りますし、12歳の時からおうちの事で一生懸命でろくに自由に遊べてない少女相手ならそりゃ雇相手も甘くなるというか。「仕方ない」と情けを掛けちゃうのも分からなくないなって思うんです。「情け」これも「情」ですね。勿論今の時代だといけないことだと感じますが、これも”明治時代”ならではなのかもしれないと感じた部分でした。まぁそんな事をいうと、そもそも作中でけいちゃんの労働姿勢を批判しているのは「女だから」難癖つけてる若旦那と丁稚だけで、その若旦那もパワハラしてますしね。しかしその事に対して直接若旦那を咎める人もあまりいないですし。あと仕事を抜ける印象が目につきやすいですが、たわら商店での貢献度はけいちゃんが抜けたのちの描写などでよくわかるので、良い面の描写が単純に少ないからわかりにくいんだろうなとも感じました。
とまぁ話がだんだんずれてしまいましたが。この作品、時間の流れも恋愛面も仕事面もなんとなく現代とだいぶ違うというか、前作の大正や昭和初期とも違う。”明治時代”だからこその描写なんだろうなと感じる部分がとても多かったです。制作ブログや各雑誌を読んでいても、時代背景の雰囲気を出すことにこだわっていらっしゃるのは凄く分かりますし、どこかの雑誌で久史役の榎木くんも「人との支え合い」について触れてましたしね。
”明治時代”、”庶民的なあたたかみ”、”人情”。こうしたものがベースにある作品なんだなと、このハイカラという作品を振り返るとつくづく感じます。それを踏まえると作中の伝えたい事ってのもよく分かりますし、個人的には人間味溢れる登場人物ばかりで何度も読んで人間像を探るのがとても楽しい作品でした。どのキャラもめちゃくちゃ愛着凄いです。
しいて文句をいうなら、わちゃわちゃシーンがいつもより短めで寂しかったですね。でも仲良いんだかそうでないんだか、けいちゃんを基準にそれぞれの目的で集まった人達なんで、なんとなく仲良くなり過ぎない距離感もリアルなのかなと。
とまぁ好みは別れるのも理解できますが、個人的にしっかり楽しめた作品でしたし、終わってしまって寂しいです。まだまだ読めると思うので、時間を置いたらまたプレイしたいなと感じますね。大好きです。



キャラについて


芳川けい

祈る煌星
自身の家庭が苦しいにも関わらず困っていれば見ず知らずの人間や対して親しくもない相手の身の回りの世話をしてやったり、信じて慮ってやったりと、思い遣り溢れる情深い子でしたね。時にうまくいかず周りに不安な気持ちのまま当たってしまうこともありますが、すぐに反省しますし、そもそも周りに当たる理由が自分が不甲斐ないことへの義憤からですからね。正直けいちゃんは自分をちゃんと律して考えれる偉い子だなと思います。育ってきた環境ゆえに危機感が薄いというか、危なっかしいのは事実ですが、正直人につけられてるとか実際わかりませんしね。一生懸命生きてて応援したくなる子ですし、その深い深い「情」を求めて平凡な庶民の少女に惹かれていく男達の図がとても好き。



南郷久史

不器用な比肩星
改めて振り返ると久史は幼い頃に再婚し、他人が家族になる。後妻をむかえるという事実が不誠実、はっきりしない。そんな印象を得て、はっきりした生き方をしたいし、曖昧な父親を越えたいし、自分は決めた相手には一途でいようと思っているのかなと。そう思うと坊ちゃんのけいちゃんに対する想いの「恋」ではないような気もしますが、攻略対象の中だと一番「情」のある家庭でうまれてるからか、一番「恋」に近い恋愛過程だった気がしますね。結婚を言い出す流れが最高に好きでした。久けいちゃんは永遠に妄想できる。かわいい。



松原銀之助

孤高の天星
作品のテーマかなり詰まってた√な気がしますね。サブキャラ大活躍√。「恋」と「愛」の話。色んな情報を一気に捌いていたので、銀先生の過去自体はあまり掘り下げなかった印象なので、もう少し知りたいところがあります。個人的に分からなくはないけど、今作面倒くさい大人枠でした。縁談のくだりは本当にひやひやしたというか、けいちゃんがいじらし可哀想でよかったですね。手を出しときながらやっぱ違ったは大人げないぞ!と思いつつも銀先生の気持ちはわからなくないから難しいところ。



守田楓花

可憐な綺麗星
乙女ゲームではなかなか味わえない面白いルートだったのでは??「恋」とはと考えましたね。「依存」と「執着」が先にあってそこに「性別」が生まれた事による「恋」。作中一番暴れ回ってくれたキャラだと思うんですよ。も~~!!この子は~~!!って気持ちになるんですけど、けいちゃんがいいならそれでいっか~~!みたいな。この√のけいちゃんほんと良く頑張ってた。駄目な子ほどかわいいというかなんだかんだ愛着が凄いキャラなんで大好きですね。”声”の変化が凄すぎて感動しましたね。



咲村賢

洒落た宿星
わかりにくふりしてますがとても分かりやすい子。警戒心の強い愛情に飢えた子。ルート中の自分で突き放してるくせにけいちゃんに離れてほしくなくって引き留めちゃうとこほーーーーんとズルいし愛おしいんですよね。シナリオも王道身分差すれ違いでよかったですね!!最後までドキドキはらはらなシナリオでしたし。いちゃつき方が幼子の悪戯みたいなじゃれ合いなのほんと。他の作品なら一癖あるキャラ枠なんだけど、高木ゲーだと逆に王道感あるの面白いなと思いました。



中井徳治郎

寡黙な昴星
ダークホース。いやほんとダークホースでした。基本的箱推しなんですが、徳さんは飛びぬけましたね。間違いなく最推し。皆辛い生い立ちですが一番雁字搦めでどうにもならない状況だったのがな。√中何度泣かされたことか。こういう生きるのに不器用な子は沢山幸せになって欲しいです。紲EDが何気にダメージおってるんですよ。予想してなかった不意打ちだったので。でも最高に好きなんだよな~~!!!完全に素のむき出しのままの感情に触れる瞬間がどうしようもない気持ちになります。「信じてくれないのか」とか「なにをしていいのかわからない」とか「消えてしまいたい」とか。ほんと、、、、しんどい、、、、、、幸せにしてあげたいし、なって欲しい、、、けいちゃんと一生幸せになって、徳けいちゃん尊い、、、大好き、、、、



最後に

相変わらず愛着が凄く、大好きな作品になりました。高木ゲーはやっぱり一生ついていきますね。個人的にまだまだみたいというか徳けいちゃんの続きが凄く凄くみたいのでFDをまた永遠に待つゾンビになります。出来る限り応援するぞ、、。ほんと楽しかったです!ありがとうハイカラちゃん!



推しランク

中 井 徳 治 郎 


久史=賢>楓花>銀


まぁ全員愛着凄いのでほぼ箱推しなんですが徳さんだけとびぬけてます。ぐううう、、、好き。サブも皆愛着凄いので大好きですね!