(ぬ)乙女ゲーム感想保管庫。

乙女ゲームの感想日記。

明治活劇 ハイカラ流星組 ―成敗しませう、世直し稼業― 個別感想②(銀之介/徳治郎)





松原銀之助

孤高の天星
けいと同じ長屋に住んでいる英語講師。31歳。頭が良く、綺麗好きで、よく部屋で小説を読んでいる。厳格な性格だが、けいとは近い立場にいるため家庭状況も把握しており、よく助言をしてくれる。ハイカラ流星組では策士的な立ち位置。


ハイカラ流星組のブレイン的な役割を担う銀先生は頭のキレが早く、常に何手も先を読み行動する人です。感情論よりも理論を優先するタイプなので、一見厳しそうな印象を持ちますが、年長者としてアドバイスや相談に乗ってくれたり、時には慰めてくれる優しさがある方です。実家は裕福な家庭で、自身も英語教師を務めており、非常に優秀な方ですが何故かけいちゃんと同じ質素な長屋住まいをしており、なにかとけいちゃん親子を気遣う、というより見守る様子がみられます。
そう、銀先生も賢さん同様けいちゃんにはとっても大きい感情を持ってるタイプでしたね。まぁ賢さん、銀先生に限らず、今作の攻略対象は皆色んな形でけいちゃんに最初からクソでかい感情持ってるキャラばかりなんですが。皆開始時点でけいちゃんとは既に数年単位で関係性を構築してるところからのスタートなので、初めから想いを溜め込んでる始まりなんですよね、今作。なので、ハイカラ流星組ってまさにけいちゃんを中心にして集まるして集まったメンバーだなとしみじみ感じます。それぞれの深い愛情だの執着だのを段々見えてくる瞬間が凄く個人的に好きな部分ですね。
とまぁハイカラ全体の感想はまとめ感想でもっと語るとして、銀先生√の話をすると、この√個人的に全体を通して「家族」というものがなんとなくテーマにあったのかなぁと感じる部分があります。大きな理由としてはけいちゃんの家庭問題を大きく描いているところにもあるんですが、銀先生をはじめ、トミさんや常良さんなどのバックグラウンドが語られていたり、結婚や家を継ぐといった明治時代ならではのそれぞれの「家」に対する価値観が描かれていたなあと感じる部分がありました。また後日談で発覚した設定とかからも、銀先生がけいちゃんにむける静かで見守るような深い深い愛情というのが、どことなく色恋以上に親愛っぽさがあるなと感じたんですよね。ステラの後日談小冊子の方でも、「家族」に触れていますし、なんといったらいいんでしょう。「家」に対する価値観とそこに伴う「情」が凄くメインになってる√だなと感じました。
これはまたハイカラ全体の話になりますが、銀先生含め、攻略対象たちは何かしら家庭環境に「情」がない環境で育っています。一方で貧乏ながらも母親と二人で支え合い生きてきたけいちゃんって凄く凄く情深い子なんですよ。常に母親を思い遣りながら育ってるんです。そりゃ情深い性格にもなりますよね。人を疑ったり、嘘をついたりする事と無縁な、人情溢れる純粋な子なんですよ。「情」が欠落した環境で育ってる人達がそんなけいちゃんに惹かれるのって凄く納得できるんですよね。
今回の銀先生でいえば、けいちゃんの存在は”生きる理由”そのものになっているんですよ。それは居場所がなかった孤独から救ってくれた恩人、その人を失った悲しみを乗り越えるためにすり替えた執着だと思いますし、作中や銀先生自身も言っていた通り、けいちゃんに対するその執着は「色恋」みたいなものとは違うものだと思います。けど二人で互いを思いやって支え合うけいちゃん親子をずっと見守っていくうちに、だんだん同じようにこの親子を大切にしたいという「情」が生まれたのかなと思います。ここら辺はこの√で大きく関わってくるサブキャラの心情変化と似てるんじゃないでしょうか。どことなく生い立ちが似てますしね。銀先生がけいちゃんに対して「好き」じゃなく「愛してる」と伝えるあたりから、個人的にも銀先生のけいちゃんへの想いは「色恋」ではなく「愛情」なんだろうなと。
でもまぁけいちゃんは16歳の女の子ですし、銀先生に芽生えた想いは「色恋」なんですよ。それ故に個別中盤はすれ違い大変大変。焦って「恋」と「愛」を混同してしまったが故に、後からになってあれは違ったってなった銀先生の気持ちは分からなくもないんです。感情より理論を取るタイプなので、世間体だったり現実的にみて行動を起こさないのも性格上理解できます。しかし手を出したのに責任を取らないのは大人げないというか面倒くさい!!なんてすれ違い際中は思わずにはいられなかったですね。そしてそんな銀先生に振り回されつついじらしく恋心を持て余すけいちゃんの様子が切なくってよかったですね。友情に熱い友人がいてよかったな。サブキャラが本当にいい仕事をしていた√だったと思います。
そして終盤の話ですが、個人的には普段だと苦手な流れで若干胃をざわつかせながらプレイしていたんですが、おかげさまで徳さんルートが死ぬほど楽しみになりました。これは大変な匂いがするぞ、、、面倒くさい大人の匂いがするぞ、、、とわくわくがとまりません。徳さんすっごい楽しみです。とまぁ徳さん語りで最後〆てしまいましたが、銀先生√は「恋」じゃなく「愛」のシナリオだったのに、最終的に振り返ると少女漫画らしい雰囲気もあるシナリオでした!お姫様抱っことか薬指へキスとか、修羅場とか。なんとなく少女漫画のメインヒーロー感ある事結構してたなと。高木ゲーにしてはキラキラしていたという印象なので、新鮮でしたね!面白かったです!!!


中井徳治郎

寡黙な昴星
けい、銀之助と同じ長屋に住んでいる真面目で寡黙な人力車俥夫。28歳。仕事柄、帝都を知り尽くしているほか、何かと情報も仕入れている。料理も得意。俥持ちの俥夫ということでそれなりに稼いでいるらしい…が、その分毎日忙しくけいと接する機会もあまり無い。黄身丸という犬を飼っている。


高木ゲーでは毎回真相√を担う隠し攻略対象がいますが、今作は隠し攻略対象がいない代わりに攻略制限キャラが設けられています。その攻略制限キャラというのが徳治郎さんです。久史坊ちゃん、銀先生ルートを攻略すると解放される√になります。そして久史√、銀先生√で色々一癖も二癖もある真意の読めない一面を晒し、波乱を起こした存在でもあるんですよね。この人は絶対なにかある!と√プレイ前からわくわくさせてくれたキャラでした。その期待にハズレなく、非常に私の性癖を貫いてくれた素晴らしいキャラでしたね。飛びぬけて最推しです。


事前に注意しておくと今回はネタバレをあまり回避せず感想を書きます。ネタバレなく語れる気がしないので、あしからず。


徳さんは共通の時点では寡黙で真面目。日曜まであまり休むこともなく仕事をしているような仕事人間で、あまり長屋にいる事もなく、プライベートがある意味謎といった感じの人なんです。しかしなにかとけいちゃんの事を面倒みてくれる。ここら辺は銀先生や賢さんと似ていますね。銀先生や賢さん同様、なにかしらの理由でけいちゃんにクソデカ感情を持っているのだろうという事は読み取れるのですが、それがなにから来るものなのかは漠然としていてわからないといった感じです。そもそも銀先生、久史√でまぁ色んな謎を残している人なんですよ。そこを経てからの個別なので銀先生や賢さんと似たクソデカ感情持ちだとしても、その感情の真意自体は一切読めないんですよね。でも基本優しいしかっこいいし、色恋と無縁で育ってきているため、男女関係に対しても初心で。手が触れるだけで動揺する徳さんとか可愛くって。共通の間は周回すると追加されるシナリオを読みつつ、不穏さと純情さを同時に楽しんでいましたね。
それは個別に入ってからも同じで序盤~中盤まではひたすら徳さんの不穏さとかっこよさにきゅんきゅんしていました。だって徳さんめっちゃかっこいいんですよ。けいちゃんを守りたいと思ってる故に、危ないことに巻き込まれがちで危機感がないけいちゃんに本気で心配して叱ってくれるんです。でも人の機微とか思い遣り、「情」に疎くって、どこか端的というか。冷めてるというか。言葉端がきついんですよね。ただけいちゃんに危ない事して欲しくない気を付けてって言いたいだけなのに、「お前のやり方だと危ないし、聞き込みにお前は向いてない」「だからお前は聞きこみはしなくていい」「もしそれで周りを巻き込んだらどうするんだ」なんて。けいちゃんからすれば「役立たずだからなにもするな」って言われてるような言い方をしちゃうんですよ。勿論徳さんがいってる事は事実です。実際にけいちゃんは悪意や危険と今まで無縁で育ってきているので人を疑うとか危機感をもつとかそこら辺の意識が薄いんですよね。でもけいちゃんなりに自分のそういう悪いところを自覚しているので迷惑を掛けないよう皆の役に立とうと自分の出来る事は精一杯頑張ってるわけで。久史坊ちゃんの場合は素直じゃなかったりデリカシーがなく、あえてそういう悪口を意図的に言ったりしますが、徳さんの場合はそこは無自覚です。「お前には向いてないからやめろ」と事実のまま言っちゃうし、それがけいちゃんを心配して危険な事をしてほしくなくっての発言なんですけど、言い方に思いやりに掛けてしまっているんですよね。
これは言動だけでなく、日常生活の端々で少しずつ伺えて、たとえば飼っているペットの黄身丸。徳さんは黄身丸の飼い主ですが黄身丸が雌か雄かすらも知りません。黄身丸が何を食べているのかも、なにを食べるのかも把握していないんです。極めつけは黄身丸が具合が悪そうだなと思いながらも、特になにもしないんですよ。寝かせておけば大丈夫か、なんて思っています。でも悪意はないんです。徳さんはそこら辺の善悪が一切「わからない」のです。そしてそれは他人に対してだけでなく、自分自身に対してもなんです。自分が倒れるまで自身の体調不良に気付かない人なんです。数日間食事が喉を通っていなかったことすら、自分のことなのに気付かない。様々なことにおいて無頓着。というより、もっと根本的な話をすると「欲」そのものがないんですよ。何かをしたい、欲しい、もっといえばそもそも「生きたい」という意思すら薄いところがあります。自分自身にも「情」がない人が他人にも「情」があるはずもなく、日常の中で時折そういう冷めた部分が見え隠れする。個別に入りだすとそこが顕著になります。でもそれと同時にけいちゃんと過ごしていくことでその欠落した「情」というのが段々芽生えていくことになるんですよ。黄身丸に対してもけいちゃんに対しても、だんだん過ごしていくうちに徳さんの中で気付くことが増えていく。徳さんは本当に色々内緒にしていることや隠していることが多いです。立場上けいちゃんに信じてほしくっても言えないことばかりです。それでも徳さんは「けいちゃんは守りたい」その想いだけは本物なんですよね。そして「けいちゃんに自分を理解して欲しい」という「欲」が生まれていきます。その欲が生まれた子とで徳さんの”いままで”が崩れていくことになるんですが、ここからが実は大変なルートだったんですよね。
そもそも徳さんが人の機微や「情」がわからない、「欲」がない人間になったのには育った環境に原因があります。幼少より受けた教育、もとい折檻と調教による強い洗脳教育により「個」というものを限りなくなくされているんですよ。誰かの命令だけを従う使い捨ての「駒」として。しかも身寄りのない身分。抗う事も本人の選択肢すらなく、そういう教育をされてます。意思を奪われた教育を受けて28年生きてきてる。それがたった一つ、けいちゃんに「理解されたい」という欲だけが生まれた。逆にいえば「それだけ」なんです。けいちゃんに理解されたい、けいちゃんを愛おしいという欲はうまれていますが、そのためにどうすればいいのか彼は分かりません。どうすればいいか考える意思すらそもそも奪われている。けいちゃんを愛しいと思っているのに、どうすればいいのかわからない徳さんの葛藤が本当に辛くってですね。何度も「信じてくれ」「信じてくれないのか?」ってけいちゃんに縋る徳さんを見る度泣きました。ほんと心臓わしづかみでした。本当に不器用に生きる方法しかしらない徳さんがいじらしく、辛く、とにかく幸せになって欲しい気持ちでいっぱいでしたね。
そしてそんな徳さんに何度振り回されて不安になろうと、最後には徳さんを信じたい理解したい、徳さんを解放してあげたいと思うけいちゃんにはよく頑張ってくれたという感想が強いです。徳さんを幸せにしたいし、徳さんに幸せにしてもらいたい手放しに周りから祝福される関係でなくっても、そういえるけいちゃんが素敵だなと思いました。そう、本編歓喜EDだけみると穏やかでハッピーな気持ちで終えた徳けいですが、ステラの後日談小冊子読んでも分かりますが、徳けいはこれからが始まりですし、世間的に幸せをつかむのは難しいんですよね。それでもお互いが離れたくないと思ってるからこそ、めい一杯幸せになって欲しいです。わからないことが多い徳さんに悪知恵教えて、うのみにして実行しちゃうのでは??ってはらはらしてる様子とか凄い可愛いし、素直に聞き入れてる徳さんもほんと可愛くって徳けいちゃんは純情カプって感じでいいですね。
驚かされたのは紲EDです。これ系はハイカラではないっていうか、紲EDって実質流星組EDだと思っていたんですよ。ゆえに普通に驚きましたし、死ぬほど性癖で気が狂いました。スチル含めて1000000満点性癖です。ありがとう。ハイカラで味わうと思ってなかっただけに最高でした。ということで√シナリオもキャラ属性も、紲ED面も全てにおいて性癖をブッさしてきた徳さんは罪深いですね。問答無用で最推しですし幸せになって欲しいです。沢山笑って過ごしてね。