(ぬ)乙女ゲーム感想保管庫。

乙女ゲームの感想日記。

月影の鎖 ―錯乱パラノイア― 個別感想




猪口渉


島に派遣されてきた軍人であるが、実家はこの島の名家。血の繋がらない異国人の母と腹違いの弟がおり、永らく島民から差別を受けている現状をどうにかしたいと思っている。


猪口さんは街の治安維持を務める軍人さん。とても実直で真面目な青年で、困っている人に手を差し伸べてくださる優しい人です。めぐみちゃんとの出会いも大荷物を持っためぐみちゃんの荷物を運んであげるという彼の親切からでした。しかしその時は名前も名乗らず、荷物だけ運び届けて去っていっちゃうんですよね。彼にとって人に手を差し伸べるのは当たり前といった様子が序盤から見受けられます。人に優しい猪口さん。しかしそんな彼の周囲は常に厳しい現実が付きまとっています。彼には腹違いの幼い弟がいるんですが、その弟の見た目は金髪碧眼。異国人の義母の子供、ハーフなんです。この時代「異国人差別」というのが強く根付いてる時代です。島の住民達も例外でなく、異国の血が入った人間には皆一様に厳しいです。女性、子供、関係なく汚い罵倒、暴行をします。猪口さんの義母も、弟、ノアくんもそういった差別にあっており、9歳の幼子だろうが関係なく昼間外を歩けばいじめにあいます。日中外を歩く事すら許されてないんです。ロクに外を歩けず家に居続ける日々を強要されて次第に笑顔がなくなっていくノアくんの心を少しでも救ってやりたい猪口さんは時折夜にこっそり、人がいない外に連れ出してやったりしているんです。めぐみはそんな夜に、たまたま猪口さんとはぐれてしまったノアくんと出会います。猪口さんとはぐれてしまった事で、他の人間にみつかり、鬼の子と罵られ、まさに石を投げ付けられそうになっていたところをめぐみが助けにはいります。この時のいじめシーンも陰湿で非常に胸糞でしたね。
ノアを助けたことにより、猪口さんとの関わりが深まっていくことになるんですが、猪口さん、本当に素敵な人なんですよね。自分の事より人の気持ちを優先する人というか。スマートに気遣いが出来る優しい人なんですよ。包み込んで引っ張ってくれるうやさしさがあるというか。あまりに不遇な環境で育っているノアを少しでも喜ばせてあげたいと思うめぐみちゃんが、猪口さん関わっていくようになるんですが、めぐみちゃん自身も実は悲しい過去のせいで少し不安定な部分があるんですよね。自己肯定力が低いというか、自己犠牲的というか。他人が求める姿であろうと一生懸命生きてる感じです。そんな彼女に緊張しなくていい、肩肘張らなくていい、自分を大切にしろと包み込んで肯定してくれるのが猪口さんです。序盤はそんな猪口さんに心惹かれていく様子が描かれてますね。素敵な紳士すぎるなと。そしてそんな猪口さんには大きな夢があり、その夢を少しでも支えてあげたいと感じ出すめぐみちゃん。この夢というのがノアくんが大きくなるまでに差別のない国にしたいというものなんですが、到底簡単にいくものじゃないんですよね。この夢に対して、今自分の立場で出来る事から緻密に立ち回ろうとする猪口さんもめぐみも凄く好感もてました。なにより個人的にとても好きだったのは、猪口さんはちゃんと差別をしてしまう住民側の意見も理解して立ち回ろうとしていたのが凄くよかったです。「島の決まり事を外から来た人間が変えようとするのは侵略行為と一緒」という姿勢、夢を語るだけじゃなく、そこに背負う責任をしっかり見据えた姿勢で非常に素敵でした。その実直な姿勢はみていて応援してやりたい、夢がかなってほしいとプレイしていて自分も感じましたね。そんな夢をかなえるためにどうするか悩みながら、それと同時にだんだん島の情勢が変わっていき、不穏な流れに包まれていくのがこの√の大筋なのですが、、。
途中の住民からの態度は本当に胸糞です。めぐみちゃんも猪口さんも、ノアくんも辛く苦しい展開にずるずる引きずり落とされていく感じになるんですが、ハッピーはここに救いがある形で終わっていて後味よかったですね。彼の目指す夢へ前進していく感じ、そしてそんな大きく重たい責任や辛い事も大変な事も沢山あるだろう夢をそれでも背負い前を向いて直向きに目指す彼が、安心して帰ってこれる場所、支えれる場所になろうというめぐみちゃんの姿勢も素敵で、この二人にお互いが必要なのがよく分かる形になっていたのがよかったなと。住民はクソですが、支えてくれる人達が皆しっかり自分を持った出来た人間ばかりで、よかったです。沢山幸せになって欲しいですね。
そして依存EDですが、これは後半の事件からガラっと変わっていく結末なんですが、これが個人的に刺さってまして。決して救いがあるわけでもない、この先を描けばどうやっても後悔と罪悪感をお互いに抱えながら、それでも愛した相手だけは幸せにしたいとお互いが想いあうんだろうなぁと。お互いもう二度と手放しに幸せと笑う事はないのがわかってるんですけどね。攻略後に聴ける依存ED後のボイス。猪口さんが決して幸せをつかみ取ることができないと分かっていても、それでもめぐみを幸せにしてやりたい。手放せない、好きなんだ、という想いが伝わってきて最高に最高に萌えました。依存ED後の二人は、お互いがお互いの決して手に入らない幸せを願って、共に生き続けるとか言うずぶずぶの地獄絵図っぽくなりそうですが、めちゃくちゃ見てみたいたまらない中毒的なほの暗さがあってよかったですね。もうその後を想像するのが楽しくて仕方ありません。罪と罪悪感と後悔をお互いに持ちあうのめちゃくちゃ好き。たまりませんでした!!!依存BADのほうは救いがないうえに悲しすぎるし、めぐみがより一層壊れそうで不安ですね。


榛名望


紅霞市に観光で訪れている青年。暇があればめぐみの店に訪れ、口説いては悦に浸っている。自分の事はあまり話したがらず、何かと秘密が多い。


めぐみちゃんの店の常連さん。素性は謎だが、何かと暇さえあればめぐみの店に訪れて、めぐみちゃんを甘く、しかし時にめぐみちゃんの脆い部分を突く様に口説く。曰く「笑顔も好きだけど、君の物思いに耽る憂いの顔が好き」
序盤はめぐみちゃんに溶かすような甘やかすような言葉を吐きつつも、めぐみちゃんが心の奥底にしまっている、繊細で柔らかい部分を引きずり出すような発言を繰り返す榛名さんにめぐみちゃんも戸惑いと困惑気味で接します。しかし自分の根底にある、自分でも肯定できない内面を包み込まれる甘言に、今までの自分自身を変えられる恐怖心と、底知れぬ安心感を覚えるようになります。
共通や猪口さん√をやっている段階で榛名さんってなんというか凄く鬱屈したものを抱えている様子見え隠れしてるんですよね。根が凄く陰鬱で暗く後ろむきというか。危うい雰囲気があるんです。めぐみちゃんの憂いが魅力的だと口説き落とす榛名さんは見ていて、めぐみちゃん自身を自分のいるところまで引きずり落とすというか。誘い込もうとしているような印象をうけるんですよね。それは歪んだ執着のようにもみえるし、しかし救いを求める依存にもみえるという感じで。しかし決してラインを踏み越えないようにしてる、というよりきっと踏み込まれる事に鼻っから期待していないというか。執着も自分にとってめぐみちゃんの存在が救いという依存もしているけど、そこから先に進んで実際に何か深く関わる関係になることは諦めているというか。おそらく共通や他ルートの榛名さんはそうした依存と執着と諦観を抱えながら「女将」と「客」の距離を維持するんだと思います。猪口√だと、おそらく光の方へ引き上げられるめぐみや、光の方へ歩める猪口に対して憧憬や羨望と共に、「彼らの為にある」という”鎖”を巻いたのかなと。しかしその”鎖”は榛名さん自身を縛るものではなく、猪口さん達が光へ引き上げるための”繋がり”なんだと思いたいですね。闇へ共に落ちてくれるのが榛名なら、光へ引き上げてくれるのが猪口さんだと思っています。猪口さんには榛名もめぐみも救ってほしい。とまぁ猪口√および、猪口、榛名、めぐみの関係性の話になってしまいましたが、閑話休題。
榛名√では榛名自身が掛けていたブレーキを掛け違え、踏み込まないようにしていたラインを越えてしまった事で二人の関係性がずるずる際限なく、変わっていく事になったんだと思います。この二人、最初に言っておくと本当にずっぶずぶに互いで引きずり落ちていきます。「共依存」が性癖な私は大はしゃぎしましたね。いやもうほんと関係性がよすぎました。もうどうやっても引きはがせない関係です。そもそもこの作品、物語の中心に立つヒロインであるめぐみちゃん自身が特殊というか、乙女ゲームのヒロインには珍しいタイプなんですよね。めぐみちゃん自身、過去の生い立ちが原因で、自己肯定力が著しく低いです。普段は自分の”育て親のため”に切り盛りしている店での思い出や、”貰い子”であるにも関わらず娘のように接してくれた大井川家への感謝の気持ちで、真面目で優しく一生懸命な乙女ゲームらしいヒロインの印象を持ちますが、その全てにどこか距離を置いているというか、壁があるというか。不安定で地に足がついているようで、全くついていないというか。「人の為に頑張り”たい”」と口で言いながら、心で「人の為に頑張らなくては”いけない”」という考えでいるんですよね。そうしないと自己肯定が出来ないんです。自己価値が見いだせない。彼女が生きる上ではそう”しなくてはいけない”んです。作中この心理を心に課した”鎖”と表現されています。月の光を際立たせる為にある”暗闇”である事を己自身に強いる”鎖”であると。自身の心にある「月影の鎖」だと。そしてこの鎖はめぐみちゃんだけでなく、榛名自身も持っているんです。榛名√はこの他人には理解されない自身が生きていくために自身で縛ってしまった鎖で雁字搦めに生きている二人が、傷をなめ合い、互いにに傷をふさいで、また互いに傷をつけ合い、不器用に愛しあう事で前をむこうと頑張る物語です。「月影の鎖」というタイトルにまさにぴったりなルートだなと感じましたね。
正直言うと、私自身凄くこの”鎖”で自己肯定をしようとする心理、凄く凄く共感してしまうんです。そのため、めぐみちゃんが榛名に感じた自分の今までをえぐられる恐怖や叫びたくなるような毒のような安堵、私自身もプレイしていて身に感じましたね。実際に榛名みたいなのが傍にいたら確実におかしくなる気がします。怖い、毒のような、なによりも優しい救いと感じますね。なので序盤から中盤まではずぶずぶになる二人に一緒に頭を振りまわして、クソでかい感情にぐわんぐわん飲み込まれてました。
榛めぐの二人は決して”尊い”という言葉で済ませれるカップリングじゃありません。尊いなんて綺麗な言葉で治めれないほど、強く大きく卑しい歪な感情で成り立ってます。しかしそんなクソでかい感情を下敷きにしながら、その根はなによりも綺麗で純真な気がします。歪な純真という印象です。榛めぐ自身が完全にずぶずぶな関係性で形成されているので、依存EDおよび依存BAD2種はどんな形だろうが”この二人らしい”と感じる部分がありますね。そうなってもおかしくない二人なので、むしろ安堵感すらどこかあるように感じました。カップリング自体が鬱くしい二人で大好きです。しかしそんな二人が本当に不器用に傷つきあいながら一生懸命、前に向かおうとするハッピーが個人的には凄く凄く刺さりました。健全なところから引きずり込んでいく闇が好きなら、その逆の闇から光へ向かおうともがく姿も美しくってたまりませんね。


「薄汚れた手でも、君と君の世界を抱きしめたい」
作中一番心に響いたセリフです。性癖に刺さり過ぎる綺麗な文章で思わず写真とって保存しました。めちゃくちゃ最高です。とんでもなく、刺さる。榛名望、榛めぐというカップリングに出会えてよかった。本当に最高なルートでした。


望月理也


神楽坂の右腕として働く切り込み隊長。礼儀正しくしっかり者で、頭よりも身体を動かす方が得意とする。


紅霞市の治安と未来を想い日々活動をする自警団「紅霞青年団」望月さんはそこで切り込み隊長として幹部を担ってます。礼儀正しく、幼い見た目に反して武道に長けたしっかり者です。しかし紅霞青年団の頭で、紅霞市の英雄と市民から持て囃される神楽坂さんと行動を共にすることが多い為、住民から神楽坂さんと比較されて見られるがちであること、神楽坂さんと比べて未熟である事を思い悩み疲れている様子が見られます。めぐみちゃんとはそうした鬱屈やジレンマを抱えて気落ちしている時に出会います。めぐみちゃんと最初に出会った頃の望月さんといえば、ツンとしており、淡々と業務をこなしている感じでした。夜道を女性一人で帰すには危ないから送ってあげなさいという神楽坂さんの命のもと、望月さんがめぐみちゃんの店まで送ってくれるんですが、道中は無駄な会話など一切なく、素っ気ない態度。しかしめぐみちゃんが一人で小料理屋を切り盛りし、”自分の出来る事から頑張る”という姿勢を知り、彼は酷く感銘を受けます。おもわずめぐみちゃんの手を取り、凄いと尊敬できると褒めてくれます。これを機に、彼はその後出会えば最初の素っ気ない態度が嘘のようにめぐみちゃんに親切かつ礼儀正しく接するようになります。凄くめぐみちゃんに好意的なんですよね。それは恋というよりは憧れとかによる好意に近いんだと思いますが、傍からみれば恋煩い意識しているような態度なので見ていてニヤニヤしました。そしてそんな望月さんにめぐみちゃんもドキドキします。何故どきどきするのか、望月さんを意識するのはどういう想いからくる感情なのか、中盤くらいまではめぐみちゃんもよく分かっていないんですよね。
そもそも望月さん自身、めぐみちゃんと真逆に位置する人間という印象です。凄くまっすぐに人を思い遣り生きれる人というか。眩しく人を惹きつける光を放つ人間。まっすぐに光に向かって歩けるタイプの人だと思います。おそらくめぐみちゃん自身望月さんの放つ光に憧れ惹かれていったんだと思います。しかし、彼女自身は陰鬱を抱えた少女です。初めはそれこそ、強すぎる光に憧れるものの、自分の闇が露呈するような居心地の悪さというか不安のようなものを覚えてか苦手意識もあり、自分のような人間が傍にいる相手ではないと距離を置こうともします。しかしどうしても惹かれてしまうことをやめれないめぐみちゃん。この√のめぐみちゃんは闇をはらんでいるにも関わらず、光の方へ向かう人間に変わろうと自ら動いていきます。
めぐみちゃんの闇に共感して脆い部分を肯定して包み込み、ずるずると一緒に落ちていった榛名√とは真逆の心境変化だったなと感じますね。榛名自身もめぐみちゃんの光へ向かおうとする変化に「失望した」とショックを受けている様子が描かれたので、思わず榛名の事が心配になりましたね。まぁそれでも不器用に煽り、光へ走る彼女の背をおしたり、「客」と「女将」の距離を選んだ榛名の心情に榛名ぁ;;;;ってなったんですが。いや、望月√なので榛名の話はほどほどにしますね、閑話休題。
まぁそんな感じで望月達、光を放つタイプの人間に惹かれて、彼らのようになりたい、というか彼らのなにか役に立ちたいと思い出し、行動するようになっためぐみちゃんはこの√では自ら商店街の人間から白羽の矢が立つような行動をしていきます。良く言えば自身を貫き通す信念ですが、悪く言えば悪目立ち。めぐみちゃんの選んだこと自体が悪いことじゃないと思いますが、集団において足並みそろえない人物はそこにどんな理由があろうが悪です。
そうして招かれた最悪の自体。悪意と悪循環に段々疲弊していき抱え込む事ができなくなるんですよね。まぁめぐみちゃんが選んだこととはいえ、悪意があまりに陰湿で胸糞なんですが。処理できなくなって、自分の未熟さや覚悟が出来ていなかった事、愚かさを自覚して恥ることに。光にいる人達に憧れて彼らのように振る舞い頑張ったけど、所詮真似事。自分は闇をはらんだ人間。そうした事実に打ちのめされていきます。そんな彼女に寄り添うのが望月さんになります。
望月さん自身、最初は彼女の”自分にできることから頑張る”という健気にも、直向きな姿勢に憧れているんですが、接していくうちに、そうした彼女の”こうあるべき姿”のメッキがはがれて、彼女の脆い部分が露呈して、”本当の冬浦めぐみ”という人物を知っていく事になるんですよね。本当の彼女は危うく陰鬱を孕んだ未熟な少女。大人だと憧れていた女性は、自分よりも年下のか弱い少女だった事に気付きます。そうしてそんな彼女を”どうにかしてあげたい”、”彼女の心を自分が救ってやりたい”と思うように。ここら辺のめぐみと望月の互いの印象の変化が見ていてきゅんきゅんしましたね。脆い部分が露呈しためぐみを救ってやりたいと思う望月、そんな彼が頼もしくみえるめぐみ。中盤から後半にかけて、どんどん望月が光の人間で、彼の放つ眩しい光で、めぐみの闇が浮き彫りになる印象を受けました。まぁだからこそ、依存EDやBADは非常に素晴らしく輝いたと思うんですが。
とにかくこの√は陰陽で生きるタイプの違う人間が惹かれあい、どちらに引っ張っていくかって感じでしたね。ハッピーは望月さんがめぐみに根気よく付き合い光のほうに引っ張っていった印象です。その際に色々あってフラれたりもするんですが、攻略対象にフラれるのが性癖な人間。この√とってもときめきましたね~~!想いを受け止めれないと突き放す。でも悲しむ彼女を放っておけなくって思わず引き留めてしまう。けど受け止める事は出来ない。ここら辺の葛藤にきゃああきゃああ萌えました。ありがとう望月さん。性癖でした。
そして逆のBAD,依存EDでは闇に埋もれていくめぐみに引きすられて一緒に落ちていく形。もうね~~!この依存ED,BADどちらも最高に最高に最高に性癖でしてね~~!!健全な人が惹かれた女の子とともにずるずる落ちていく姿はやっぱ見ていてたまりませんね!!!BADのタイトルが「カメリアコンプレックス」ということで。不幸な女性をみるとつい救ってやりたくなる男性の心理の名称ですね。光で生きる望月さんの唯一闇に引き込まれる要素がこの「カメリアコンプレックス」だったのかなぁと思うとなかなかにぞくぞくしちゃうというか。生い立ち故の心理ですが、それゆえのBADの結末。また依存EDでの行きつく形なんだと思うともうたまりません。とにかくめちゃくちゃこのBAD,依存EDが性癖に刺さりまくってしんどかったです。是非、、是非、、、続きを見たい、、。いや依存EDの結末は最終的にBADだとおもうんで、そこに行きつくまでの過程をずっと見てたいです。ほんと素晴らしかった。すき。


神楽坂響


知識が豊富で能弁家。元々島に住む人間ではないが、一年前に起きた天災で活躍して以来、町の人達に慕われ、何かと頼りにされている。


島の治安と未来を想う若者たちの集団「紅霞青年団」そこの団長を務めるのが、神楽坂さんです。彼は元々島の人間ではなく、たまたま島に訪れた時に花柳街を襲う天災に見舞われました。、突然の災害に恐怖と不安で混乱する住民達を前に、彼は率先して救助と指揮をとり、多くの救命に勤めました。災害後も島に滞在し、街の復興に助力したことから、彼は島の住民から「英雄」と呼ばれ、強い信頼と期待を寄せられています。知識に長けており、行政にも精通している。非常に仕事人間で、自身を顧みないワーカーホリック。過労を心配する声に対してものらりくらりとかわして、はぐらかす態度をとる。島の中心人物にあたるが、その実身の上や素性などは謎が多く、全身包帯で包まれた異様な姿にも関わらず、その理由を知る者は少ない。
他ルートでは食えない男ながらも、少しのおちゃめさを秘めた頼りになる出来た男という印象が強かったですが、個別だと腹に一物抱えたなかなかに狡賢い策略家という印象が強かったですね。利用できるものは利用する姿勢。義に厚いが、情に深くないという印象です。
そんな彼との恋愛ですが、途中までの展開は望月√と同じです。島の為に努める「紅霞青年団」という光を放つ存在に憧れ、そんな彼らのようになりたい、彼らの役に立ちたいと光を目指して行動していくようになるめぐみちゃん。しかし慣れぬ事でやり方も幼く拙い彼女は、次第に悪循環にはまり込み、疲弊して倒れてしまう。
ここで望月に助けられ囲われていく中で、心が折れて光を目指そうとしたものの、ずるずる闇に逆戻りするのが望月√ですが。この神楽坂√では、自身の拙く幼かった考えを神楽坂に指摘される事で彼女は反省し、さらに強く光を目指そうと前を向くようになります。”大事なのは貫き通す事”ということで、この√の彼女は心を強く持ち、なにがあろうと最後まで姿勢を変えずに考えを貫き通した事で、非常にメンタル面において強く成長した印象ですね。他のルートだと色んな悪意による外部因子のせいで店を最後まで営業できず、志半ばで休業しないといけない状況ばかりだったので、この√で反省あれど自分の意思で店を閉店できたのは凄くよかったなと感じます。そして店を閉店後はまさかの紅霞青年団に入団するようになるとは。
この√のめぐみちゃんは本当に陰鬱を孕んだ少女の面影を消し去り、完全に光で生きる、強かに成長した大人の女性に変わっていきます。そしてその成長に基づく原動力は全て「神楽坂さんに釣り合う存在になるため」なんですよね。
そうこの√の彼女は神楽坂さんという光に依存し、妄信することで、それに見合う女になろうとどんどん神楽坂に合わせて成長していくんです。神楽坂の為になるよう、自ら考え行動を起こしていく積極性を持ち合わせていくめぐみ。それはいい事でもあるんでしょうが、プレイしている自分からすると少し複雑でした。まぁそれは私自身が榛名と一緒でめぐみの持つ陰鬱とした闇に惹かれていたからなんでしょうね。神楽坂の為に光へ光へ変わろうとするめぐみの姿に、どこか失望してしまっていたところはあります。というのも、そもそもめぐみは自身をすっかり光側に向かえた人間と思ってますが、その根底は全て神楽坂さんへの依存と妄信からくるものなんですよ。自身で考え行った行動というより、神楽坂の理念に基づくか否かの考えなので、それは果たして自立といえるのかいなか。まぁどのルートでもめぐみは恋をした相手に依存する事で変わっていくので、どんだけ前を向いた彼女でも結局誰かの依存のもとでしか生きていけない脆さとか愚かさは好きなんですけどね。しかしそれを自覚せずに榛名のことを「以前の自分」と哀れみ同情するという、無意識からも上からものを見ていたのが凄く凄く癇に障りました。というよりもまぁ途中の榛名の闇や依存心を利用する流れがあまりに辛すぎて受け入れにくかったっていうのが大きな理由なんですけどね。このシーンに対しての榛名について語りだすとキリがないので中略しますが、なんともいえない気持ちになりました。私にはまた新たな鎖で縛ったように見えたんですが、闇を孕んだ人間にはどんな形でさえ依存先があるだけ救いなんでしょうかね。難しいところです。個人的には猪口さんという光がいる事が唯一の救いですね。
まぁそんな不満や悲しみはあれど、神楽坂さんとめぐみだけを取り上げると、この二人の関係性も嫌いじゃないです。そもそも神楽坂さんの光って身を削ることで輝く光なんですよね。眩しく輝こうとすればするほど、自身をすり減らしていく光。捨て身というか満身創痍というか。そうして輝き続けたことで周りを照らして、新たな光を生み出す。作中で神楽坂さんを「太陽」と称し、「月」をめぐみと表されていました。太陽は自らの輝きで光を生み出しますが、月は太陽の光を反射して光を放ちます。太陽に照らされることで月が輝く。そういう意味では、めぐみは神楽坂という太陽の光で、光輝きました。それはめぐみだけじゃなく、誰かに頼りきりで他力本願に依存しがちな島の住民達も同じ。神楽坂の光を受けて、彼らも変わろうと輝きます。そうして自身の身を削り輝き続けた彼の最後に残るものは”闇”だったんじゃないのかと個人的に感じます。というより、太陽に見せかけて根底にあるものは闇だったのかなと。環境が違ったゆえに彼は太陽として光でいましたが、根本的な部分では彼自身も”鎖”に縛られた男だったんじゃないかと。
先ほど、めぐみは神楽坂の理念のもとで成長するため、自立ではないといいました。実際に行動理由すべて神楽坂に繋がりますし、榛名への利用行動も全て神楽坂の理念です。しかし、そうして神楽坂の光で輝き続けためぐみの光はやがて、神楽坂のはなつ光と逆転していたのではないかと感じる部分があります。最後の最後でめぐみは神楽坂の意思ではなく、自身の意思を推し通してるんですよね。しかしそれゆえに神楽坂さんは前を向く様にもなります。めぐみの光にあてられ、終わりを迎えようとしていた輝きを再度灯します。こうして見返すと、彼は太陽でもありますが、月でもあるんじゃないかなとおもいますね。というより環境に照らされ太陽のように輝いていた月という印象でしょうか。そうおもえば、輝きに身を削るハイリスクがあるのも納得というか。
まぁそれゆえの結末といいますか。神楽坂√、ハッピーも依存もどちらも結末はしっとりとしたもので締めくくられます。どちらも仕方なくいきつく結末だと思いますし、この作品らしい雰囲気を残した締めくくりで個人的には嫌いじゃないです。依存のほうは王道ながらもスチルがとても綺麗でしたしね。これも一つの「英雄譚」の終わりな感じがして好きです。
とまぁ√の内容じゃなく、神楽坂さんやめぐみの人間性についてごちゃごちゃと語る感想になってしまいましたが、神楽坂√はシナリオ面だけなぞるとメインヒーロ―らしいまっすぐな物語にもなっています。手放しとは言えませんが、苦味含めても作品全体でみたら凄く光な物語です。この作品の闇や胸糞な部分に疲れている場合は最後に彼をプレイすると、後味がだいぶ変わるんじゃないでしょうか。そういう意味ではラストにプレイするのがいいキャラなんだと思いましたね。